ALTEC A7

JBLブランドのスピーカーは今でも人気があり、家庭や映画館といった現場でも活躍している。


JBLの創業者はジェームス・B・ランシングという人物で(JBLの社名は彼の名前の頭文字をとったもの)、スピーカーの開発にかけては天才と云われ、彼の残したアイディアやユニットはアメリカの文化遺産といっても過言ではない。


もともと彼の会社(ランシング・マニファクチャリング)はウエスタン・エレクトリック(WE)の、劇場用サウンドシステムの為の高域ユニット等を開発し、自社のオリジナル小規模劇場用サウンドシステム「アイコニック」などで成功を収めていた。


WEは1920年代〜1940年代の映画産業界で圧倒的なシェアを誇り(1936年に独占禁止法に触れ同社の映画産業部門は解散に追い込まれた)、当時のサウンドシステムは非常に優秀で今でも破格な値段で取引されている。


WEの映画産業部門が解散となり、1937年にWEの子会社(E.R.P.I)の業務を引き継ぐ形で設立されたのがオールテクニカル・プロダクツ(後に「ALTECサービス」社となる)である。


1941年にALTECサービスはランシング・マニファクチャリングを買収し、ジェームス・B・ランシング氏を製品開発に招き入れ、社名もALTEC LANSINGと改名した。そこでランシング氏が開発に携わった「Aシリーズ」は、ALTEC「ボイス・オブ・ザ・シアター」システムとして絶大なる評価を受ける事となる。


1946年にランシング氏はALTECを去り、洗練された家庭用スピーカーシステムの開発をすべく「JBL」社を設立するのだが、経営不振により1949年に自らの命を絶ってしまった。


ALTECは1947年に、ランシング氏の開発した「アイコニック」の後継ユニットを使い、ボイス・オブ・ザ・シアター800スピーカーシステムを発表する。 P1050697.jpg ALTEC 800とグレン・グールド(1950年)

そして1954年にALTEC 800の後継システムとして新たに登場したのが、ボイス・オブ・ザ・シアター・シリーズ「A7」であり、ALTECの顔ともいえる名機となった。


ALTECは2005年の現在もALTEC LANSINGという社名である。



写真は1954年に登場したALTEC A7の最初期型
最初期型(オリジナル)A7の構成は以下の通りである。

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■HF(高域ドライバー):802C

■高域セクトラルホーン:H-811

■LF(低域ウーファー):803A

■エンクロージュア:H-825

■ネットワーク:N-800-D

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因みに私が現在所有しているA7は残念ながら”ほぼ”初期型の構成で、下記の通りです。

◇HF:802B 後期型(振動板:オリジナル) 802シリーズは802Bから始まり、802C、802Dへと改良が重ねられていきます。 802Bには初期型と後期型があり、音も若干異なるそうです。 (振動板のリード線の太さと接合位置が異なり、初期型は細く長くて断線しやすいらしい)

802B 初期型は最初期のALTEC 800に使用されていました。 最初期型A7の高域ドライバーは802C 初期型。 802C 初期型はグレー縮緬塗装。(後期型はグリーン塗装) 802B 後期型と802C 初期型は見た目も構造も同一で、音に関しても違いがないとのことです。 但しインピーダンスが802Bは15Ωで、802Cは16Ωと表記されています。

 

◇高域セクトラルホーン:H-811(A)初期型 アルミダイキャスト一体成型 (純正米松マウンティングボード付き) 国内でもよく流通されているH-811-Bとの違いは、H-811-Bは溶接で上下繋げたつくりとなっているため継ぎ目がありますが、初期型であるH-811(A)はアルミの一体成型で継ぎ目がありません。

 

◇LF:803A 初期型 グレー縮緬塗装 フィックスドエッジ(コーン紙:オリジナル) 803A 初期型はグレー縮緬塗装ですが、同時期に生産されたものにはナス色塗装の物もあります。後期型になるとグリーン・ハンマートーン塗装になります。 ちなみに803A以前には803というウーハーもあり、最初期のALTEC 800に使用されていました。

 

◇エンクロージュア:828B 後期型 米松+パーチクルボード合板(おそらくA7-500-8後期型用エレクトリ正規国産エンクロージュア)

 

◇ネットワーク:N-800-D 後期型 グリーン・ハンマートーン(インピーダンス 16Ω) N-800-D 初期型はグレー縮緬塗装(インピーダンス 12Ω) 後期型はグリーン塗装(インピーダンス 8 or 16Ω) N-800-D 最初期型は縦長の造りでALTEC 800に使用されていました。 最初期型A7ではグレー縮緬塗装のN-800-D(インピーダンス 12Ω)でも、最初期型N-800-Dと比べると縦の長さが短いタイプのネットワークが採用されています。

 

…とまぁやはり、初期型A7と致命的に異なるのはエンクロージュアでしょう。 縦スリットの米松合板H-825でなければ、オリジナル(初期型)A7とは言えません。 いずれは頑張って入手したいと思います。 更にはネットワークも初期のグレー縮緬塗装N-800-Dが入手できれば完璧です。

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